研究概要 |
研究に参加した20名の患者データを統計解析に供した。患者の平均年齢は8.7歳で、男児が16名、女児が4名であった。Clinical Global ImpressionのGlobal Improvementの評価によって、3名が「非常に改善された」(有効群)、17名が「わずかに改善された~変化なし」(無効群)と判定された。 有効群3名と無効群17名との間で臨床観察による徴候の違いを比較すると、「音への過敏」並びに「統合運動障害(不器用さ)」を有する者の割合に違いがみられた。音への過敏においては、有効群3名のうち3名に同所見がみられ、無効群17名のうち同所見がみられたのは7名であった(p=0.11,Fisherの正確検定)。統合運動障害においては、有効群3名のうち3名に同所見がみられ、無効群17名のうち同所見がみられたのは6名であった(p=0.07,Fisherの正確検定)。以上の結果から、音への過敏と統合運動障害を同時に有する者の割合を比較したところ、有効群3名のうち3名に同所見がみられ、無効群17名のうち同所見がみられたのは1名で、統計学的に有意な違いがみられた(p=0.004,Fisherの正確検定)。 昨年度までの予備解析によって、バイオマーカーとして血中アミノ酸濃度が有望であった。20名中17名から血液検査データが得られ、これを解析に供した。ビタミンB6有効群と無効群との間で血中アミノ酸濃度のうちグルタミン値(基準値420-700nmol/mL:Gln値)に大きな違いがみられた。有効群3名のビタミンB6服用前のGln値の平均値は400.5(標準偏差20.6)、無効群のそれは481.4(標準偏差39.0)で、これらは統計学的に有意な差であった(p=0.004)。また、有効群3名のGln値の平均はビタミンB6服用前後で400.5から486.8へと変化し(p=0.09)、無効群では481.4から473.3へと変化した(P=0.62)。これら変化の差の検定を行ったところ、両者は統計学的に有意であった(p=0.02)。 以上から、「音への過敏」並びに「統合運動障害」を同時に有すること、または血中グルタミン濃度の低値がビタミンB6反応性と関連する可能性が示唆された。
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