研究概要 |
行動理論に基づいた減塩介入を行うことで、血圧値の低下に加えて意識や行動面での改善をはかり、また遺伝子多型情報を用いて血圧低下度合いに体質による差があるかを検討した。介入6か月後、介入群の拡張期血圧は6.3mmHg下がり、有意な変化がみられたのに対し(P<0.001)、コントロール群では有意な変化が見られなかった(P=0.271)。これらの結果より、減塩介入は降圧効果をもたらしたことが示唆された。また介入群・コントロール群ともにホーソン効果により減塩意識の改善が見られているが、介入群でのみ普段から自分で血圧を測る割合が有意に増加し(P<0.001)、今回の介入は血圧だけでなく、行動変容についても有効であったと考えられた。また高血圧に関連する遺伝子多型の抽出にあたってはcandidate gene approachに加え、Genome Wide Association Studyの成果を取り入れ、日本人一般集団での血圧および塩分摂取量との交互作用について検討した。それぞれの8個の高血圧感受性遺伝子より一つずつSNPを抽出し、これらの複合効果を検討した。リスクアレルの総和は3個から13個の間に分布していた。リスクアレルの和と収縮期血圧には正の相関を認めた(p for slope=0.007, y=1.143x+129.87)。またリスクアレルの和と拡張期血圧にも類似した正の相関を認めた(p for slope=0.002、y=0.914x+79.74)。介入研究の結果からはCOMT遺伝子rs4633SNPのCアレルを持つ群は、介入群の中でも減塩介入への反応が強いことがわかり、血圧の高低のみならず、減塩に対する反応性を左右すると考えられ、将来テイラーメイドな血圧管理を行っていくうえでの基礎的知見の足掛かりが得られた。
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