研究概要 |
2年度目も日本医療データセンター(JMDC)社の保有するレセプトデータの使用許諾を結び,小児感染症,インフルエンザそしてがんといった疾病の時間的空間的流行状況をレセプトデータから把握する手法開発を試みたが,昨年度に引きつづき感染症サーベイランスの定点医療機関のリストとJMDC社DBの医療機関情報とリンクさせ,サーベイランスで把握しきれない「真」の発生数推計を試みた。JMDCDBで愛知県内で麻疹で受診した342人465件中,27%にあたる127人が定点医療機関の受診で,すなわちサーベイランスの把握率が27%であることを明らかにし,真の患者数は届出数のその逆数倍であることが示唆された(谷原)。また昨年度にひきつづきインフルエンザ患者にタミフル投与直後異常行動の副作用の頻度を把握するため,インフルエンザ患者のレセプトを外傷疾患のレセプトと個人単位で突合し,インフルエンザ診療開始後3日以内の外傷発生頻度を分析した。7組合約32万人の被保険者の5シーズンのインフルエンザ受診者約14万人中115人に3日以内の外傷発生が観察されたが,タミフル投与群の発生率はその他患者よりむしろ低く外傷発生の増加は観察されないという初年度の観察結果を補強した。日本薬剤疫学会で発表した本成果は読売新聞でも報道された(岡本・橘)。田中(ならびに研究協力者である中谷,廣井)は悪性疾患のレセプト傷病名を医歯大学が運営する統合医科学DBシステムに仮実装し,たとえば「消化器症状と便秘」といった組み合わせによりセマンティック検索条件を作成した。レセプトでは疑い病名や保険病名が多いが,こうしたセマンティック検索により正確な傷病数把握が可能になる。次年度はいよいよ国のレセプトナショナルデータベースが稼働開始することからその研究利用第一号を目指し,全国レベルに成果を応用してゆく。
|