研究概要 |
当研究の目的は先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対し、新生児期にスクリーニング可能な検査法を開発し日本における実態を調査することである。先天性CMV感染症は、母親が妊娠中にCMV感染を受けると胎児が感染し、難聴や精神運動発達遅延等の永続的な障害や血小板減少、肝機能異常などを認める疾患である。近年我が国の成人のCMV抗体保有率は低下傾向にあり、妊娠中に初感染を起こすリスクが増加している。また出生時は正常でもその後顕性化してくることもあり、新生児に対する簡便で迅速なスクリーニング法の開発が望まれる。 平成19年から20年度にかけて大阪府内の2医療機関において新生児のろ紙血検体の採取を行いnested PCR法およびLAMP法の系を用い、先天性CMV感染症のスクリーニングを約1100検体で行い、3例の先天性CMV感染症を診断した。我々が開発したLAMP法の特異性は良好でnested PCR法に比較して感度はやや劣るものの、臨床応用が可能であった。現在論文を投稿中である。しかしながら臨床検体をスクリーニングする上で、現行のLAMP法では非特異的な増幅が問題となることがあり、平成21年度は特異増幅の判別法について検討した。具体的にはまず増幅産物中に含まれる制限酵素切断部位で切断後、産物を泳動し増幅産物が均一な断片に切断されていることを確認する方法を検討した。さらに電気泳動を行うことなく特異的増幅と非特異的増幅を裸眼で迅速に判別する方法を検討した。これは蛍光ラベルしたループプライマーを用いて増幅反応を行った後、クエンチャーラベルした相補的な配列のプライマーを添加し、蛍光が消失することにより特異増幅を確認するという方法(K.A.Curitisら,2009)である。陽性コントロールでの検討結果、至適添加濃度を決定できたので今後はより確実に迅速診断が可能となった。
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