研究課題/領域番号 |
19390184
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
安田 年博 福井大学, 医学部, 教授 (80175645)
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研究分担者 |
飯田 礼子 福井大学, 医学部, 助教 (40139788)
植木 美鈴 福井大学, 医学部, 助手 (00165656)
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キーワード | deoxyribonuclease I / 集団遺伝学 / 法医学 / 内因性急死 / 虚血性心疾患 / 診断マーカー / 多型 / 心室リモデリング |
研究概要 |
本研究では、解剖時または検案時に採取した血液試料中のdeoxyribonuclease I(DNase I)活性の検査値から心筋梗塞(AMI)死の鑑別診断することを目的とし、その病態生理学的基盤の確立および法医学的応用を図る。本年度では、以下の知見が得られた。 1. 近年、左室レモデリングはAMI後の予後を規定する重要な因子として注目されている。そこで、AMI発症後の血清DNase I活性と左室レモデリングの各種パラメーターとの相関を精査した。酵素活性レベルは左室拡張期終期容積及び収縮終期容積と有意な正の相関性を示した。さらにAMI発症後高DNase I活性群と低活性群を比較したところ、発症6ヵ月後の左室拡張期終期容積は前者で有意に高値であることが明らかとなった。従って、AMI発症後の血清DNase I活性レベルはAMI発症後のレモデリングに伴う心筋拡大の予測マーカーになりうることが示唆された。 2. DNase I多型における対立遺伝子DNASE1^*2はAMIをはじめ大腸がんや胃がんのリスクファクターとなることを従前の研究で明らかにしている。今回、広範囲な人類遺伝学的調査から、ニグロイド集団ではDNASE1^*2頻度が極めて低いことを見い出した。DNase I遺伝子多型について、対立遺伝子DNASE1^*2頻度はコウカソイド、モンゴロイド、ニグロイドの順番で有意に低くなることが明らかとなった。従って、DNase I多型には明らかな人種差があることが解明され、人種間におけるDNase I多型とAMIなどの発症頻度の相関が注目された。 3. DNase Iの生化学的性状を解明するため、酵素タンパクに結合した糖鎖(Asn18およびAsn106に結合)の機能を解析した。その結果、Asn18およびAsn106に結合した糖鎖は両者とも酵素活性、酵素の安定性およびトリプシン分解に対する抵抗性に必須であることが明らかとなった。
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