1.穿通性頭部外傷で脳内に遺残した異物は脳に影響を及ぼす。本研究は、脳内異物の病態解析に関する基礎的研究であり、モデル動物を用いて脳内異物に対する脳組織の反応を経時的に解析し、脳内異物による脳内の病態を明らかにすることを目的とする。 2.ラットに全身麻酔を施し、大脳の表面から深さ1.5mmの所に直径1mmの鉛球またはコントロールとして硝子球1個を挿入した。12時間、1週間、2週間、3週間、4週間後に脳と鉛球を摘出した。パラフィン切片を作製し、各種抗体を用いた免疫染色(GFAP、NeuN、ED-1、NFT)、TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出を行った。また、大脳皮質に存在するNR1、NR2A、NR2B遺伝子の異物に対する影響をRT-PCRにより解析した。 3.鉛球または硝子球の挿入後の経過日数に伴い、挿入部周囲の脳組織にはGFAP陽性星状膠細胞の増加、NeuN陽性神経細胞の減少、アポトーシス細胞の出現等が観察され、鉛球または硝子球に対する脳内細胞の経時的な変化が同様に認められた。アポトーシス細胞は、鉛球留置の場合12時間では観察されなかったが、2週間で陽性細胞数がピークになり以後減少した。一方硝子球留置では、アポトーシス細胞は殆ど観察されない結果となった。遺伝子解析では鉛球留置でNR各遺伝子の発現量が抑えられ、鉛球留置2週後での遺伝子発現量が最も低かった。以上の結果から、アポトーシス細胞の出現とNR遺伝子発現量の関係が示唆された。
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