研究課題/領域番号 |
19390187
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60136611)
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研究分担者 |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10364077)
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キーワード | 砒素中毒 / IL-6 / autophagic cell death / STAT3 / ERK / 性差 / 腎障害 |
研究概要 |
19年度の研究では砒素による腎障害の病態形成におけるIL-6の保護因子としての機能を明らかにしたが、平成20年度はさらにその分子機構について詳細に検討した。シスプラチンによる腎障害では、autophagyは保護的に機能してapoptosisを抑制することで尿細管上皮細胞を保護することが報告されているが、一方、砒素による腎障害ではautophagyは尿細管上皮細胞に対して細胞死を引き起こす主要な機構であることを明らかにした。IL-6はERKのリン酸化を抑制することでautophagyを抑えて、結果として尿細管上皮細胞を砒素による障害から保護することを明らかにした。さらに、砒素投与後にIL-6あるいはERKの阻害剤を投与することで腎障害が軽減できることを示した。このことは、砒素中毒の治療や、砒素を用いた癌治療における副作用の軽減に繋がる重要な知見と考えられる。IL-6に関する研究成果については現在論文を投稿中である。砒素に対する感受性の性差については、より感受性の高い雌マウスの腎でautophagyが雄マウスに比較して有意に亢進していることを見出し、さらに、ERKも雌マウスの腎で雄マウスに比べて有意にリン酸化が亢進していることを明らかにした。この性差にandrogenは関与せず、estrogenのみが関与することを示す結果を得たので、IL-6に関して得られた結果と総合して考察すると、estrogen受容体の活性化によるERKの活性化がautophagyを亢進することで尿細管上皮細胞の障害を増大しているものと考えられる。本研究の最終年度である21年度においては、マウス尿細管上皮細胞株を用いて砒素中毒におけるIL-6とestrogenのautophagy制御の分子機構についてさらに検討を進め、砒素中毒病態形成におけるIL-6とestrogenの機能を分子生物学的に解明する。
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