研究概要 |
タンパク質をコードしない小さなRNA分子であるマイクロRNAは,発生・分化・増殖など様々な生命現象に関わっていると考えられている。代表的な癌抑制遺伝子であるp53と深い関連性をもつマイクロRNAも報告され注目を集めている。一方で,これらマイクロRNA自体の発現調節機構については,不明な点も多い。エピジェネティックな要因による発現制御も報告がある。脱メチル化剤(5-aza-2'-deoxycytidine)を,消化器癌由来の培養細胞に投与し,発現が回復するマイクロRNAをエピジェネティックな因子による発現制御を受けるマイクロRNA候補とし,解析を行った。約300のマイクロRNAが搭載されたマイクロアレイにて検出した。対象とした培養細胞は,食道癌由来(TE-1,TE-2),肝細胞癌由来(HLE,Huh7,PLC/PRF/5),大腸癌由来(DLD-1,HT-29)の培養細胞。5-aza-2'-deoxycytidine1μMを96時間投与することによって,1.5倍以上の発現増加を認めたマイクロRNAは,それぞれ32,7,16,3,4,30,2個であった。複数の培養細胞で共通した発現上昇がみられたマイクロRNAを認めた。その中で,食道癌由来の培養細胞で発現が上昇したhsa-mir-26bと,大腸癌由来の培養細胞で発現が上昇したマイクロRNAの中で,has-mir-517a,517bに注目した。それぞれのマイクロRNAをトランスフェクションし,MTSアッセイにて,培養細胞の細胞増殖能を検討した。Has-mir26bは,細胞増殖能を増加させ,has-mir-517a,517bは,細胞増殖能を逆に低下させた。これらの結果から,マイクロRNAが培養細胞の細胞増殖に関与することが明らかになった。現在,細胞増殖能を変化させるメカニズムの解明を進めている。また臨床サンプル解析の準備を行っている。
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