肝癌進展過程において、種々の血管新生分子の発現異常が報告されている。肝癌における樹状細胞の活性化を誘導させる血管新生分子を同定するため、正常肝、慢性肝炎、肝硬変、肝癌において発現している血管新生分子はタンパクアレイを用いて解析した。各肝疾患病態において発現していた血管新生分子については、Western blotおよびABC法を用いた免疫染色により確認した。まず、正常肝においては、Ang1の発現があり、慢性肝炎においては、Ang1に加え、Leptin、FGFαの発現が見られ、肝硬変においては、Ang1、Leptin、FGFαに加え、VEGFの発現が見られた、さらに、肝癌において、Ang1、Leptin、FGFα、VEGFに加えてIL-8、FGFβの発現がみられた。肝癌の進展過程において、Leptin、FGFα、VEGF、IL-8、FGFβの発現上昇が関与している可能性がある。 また、マイクロRNA (21〜25塩基程度のnoncoding RNA)は、複数のターゲット遺伝子を抑制する新たなタンパク質発現制御機構である。最近、種々の癌細胞において、マイクロRNAの発現パターンが著明に変化していることが報告されており、マイクロRNAが、細胞の癌化に関与しているのではないかと推測されている。よって、肝癌の樹状細胞を活性化させるマイクロRNAを同定するため、肝癌において、変動するマイクロRNAも解析した。マイクロRNAチップを用いて、マイクロRNA-527が極めて肝癌において減少していることが見出された。これら血管新生分子、マイクロRNAが樹状細胞への集積にも影響している可能性がある。
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