消化器癌においてジェネティックな異常に加え、DNAメチル化やヒストン修飾異常などのエピジェネティックな異常が関与する。ゲノム上の多数の遺伝子がエピジェネティックな異常を有すると考えられ、その全貌を明らかにすることは、消化器癌の診断および治療法開発の上で重要である。本研究では、ゲノム網羅的メチル化解析法と多数の検体を定量的に解析する方法の開発を目指す。Methylated CpG island amplification (MCA)法により、メチル化しているCpG islandを効率よく増幅し、大腸癌細胞株から抽出したDNAから作成したMCAアンプリコンをCy5で、正常大腸組織より抽出したDNAから作成したMCAアンプリコンをCy3でラベルし、Agilent社のwhole genome promoter arrayにハイブリダイズすることにより得られたシグナルを解析し、高メチル化している遺伝子を同定した。また、得られた結果を、ゲノムブラウザBLAT上に表示し、クロマチン免疫沈降法(ChIP on ChIP)のデータと比較することにより、DNAメチル化、ヒストンH3リジン4、リジン27のメチル化との統合解析を可能にした。これまで、DNMTIおよびDNMT3Bを遺伝学的にノックアウトした大腸癌細胞を用いて、MCA microarrayを行い、DNAメチル化プロファイルを作成した。定量的メチル化解析を可能にするため、bisulfite-pyrosequenceの条件設定を行い、DKK3、PGP9.5、DFNA5、NTN4、FKBP6、TRIM50、OSBPL3、PON1遺伝子のメチル化を定量的に解析するシステムを構築した。さらに、胃および大腸洗浄液由来の細胞を回収後、bisulfite処理を行い、DNAメチル化を解析可能であることを明らかにした。
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