本研究の目的は、消化管組織の修復・再生に際して放出されるTヘルパー2型サイトカインが、上皮細胞及び間質細胞の機能を調節するメカニズムを明らかにすることである。申請者はこれまでに、Tヘルパー2型サイトカインIL-13が既知の受容体であるIL-4Rαの発現なしに組織傷害を起こすと言う重要な現象を見いだした。したがって新たにIL-13と結合する受容体または、未知のシグナル伝達経路を想定しなければならない。そこで、本研究は、IL-13による組織傷害の作用機構を解明するため、傷害をもたらす未知のIL-13受容体及びそのシグナル伝達経路を同定することを目標に定めた。IL-13を野生型BALB/c小腸に加えると40分でβカテニンの局在異常を示したため、本年はIL-13の細胞傷害性シグナル伝達経路について、TNFα及びその関連の経路と相互作用についてアポトーシスに関連するシグナルを中心に解析した。野生型BALB/c小腸組織にIL-13を加え、ウエスタンブロッティングによって活性化カスパーゼを時間を追って検出した。その結果、IL-13添加後40分でカスパーゼ3、カスパーゼ9の活性化が見られたが、カスパーゼ2に大きな変化はなかった。IL-4の添加ではサイトカインを加えない対照との違いは見られなかった。カスパーゼ3の活性化はIL-13受容体α2-Igキメラ蛋白によって阻害された。また、TNF-α中和によっても一部阻害された。以上の結果からIL-13はIL-4とは異なる経路でカスパーゼを活性化し、上皮細胞のアポトーシスを誘導することがわかった。その経路には一部TNFαとの相互作用のあることが明らかになった。
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