研究概要 |
遺伝性不整脈は,近年の分子遺伝学の進歩により明らかにされた新しい概念で,心筋イオン・チャネルあるいはその調節蛋白遺伝子の多種多様な変異により招来されるチャネル病であることが判明した。私たちは1996年から2次性を含めLQTS患者の遺伝子検索と発見された変異チャネルの機能解析を行っている。2008年3月の段階でLQTS症例を含む1070名の遺伝性不整脈患者のゲノムを集積した。これらのゲノムに対して網羅的にLQTS関連遺伝子の検索を行い,同時に,新規責任遺伝子の候補についても検討した。さらに,遺伝子異常が同定された症例にっいては疾患の表現型と遺伝型の連関を調べ,以下の研究発表欄にもあるように,多くの論文や学会報告として発表した。なかでも,新規の原因遺伝子としてカリウムチャネルのβサブユニットであるKCNE3に新規変異を発見し,世界に先駆けてその機能解析をおこない,新しい原因遺伝子として報告した。また,心筋ナトリウムチャネル遺伝子の新規変異が家族性心房細動例で発見された。その機能解析から,この異常は,従来,ブルガダ症候群で報告されているのとは逆にgain-of-functionが起こることが明らかとなった。その機能変化と病像との関連について検討し報告した。すでに,250例以上のイオンチャネル遺伝子変異を有する症例が同定されており,現在,表現型との比較検討を行っている。
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