研究概要 |
本研究は、研究代表者等がマウスES細胞で構築したシステムを用いて、新たな心臓再生治療応用シーズの探索を行うともに、ヒトES細胞においても同様のシステムを構築し、細胞・遺伝子・薬剤など新たな治療応用の可能性を包括的に開拓することを目的とする。研究期間内においては、1)ペースメーカー(PM)細胞の誘導・純化・移植による生物学的PM再生法、2)心筋前駆細胞を用いた効率的心筋再生法、3)心筋及び前駆細胞分化誘導因子による新たな心筋再生治療法の開発、及び4)新規心筋再生治療標的分子の探索を行う。まず分化誘導及び遺伝子操作などの研究基盤が完成しているマウスES細胞を用いた検討を先行し、マウスES細胞における結果をヒトES細胞においても検証する。 本年度は、1)マウスES細胞由来心筋細胞におけるイオンチャネルの発現と機能の経時的解析を行い、ES細胞からの心筋分化・成熟過程を明らかにすると共にHCNチャネルとT型Caチャネルが心筋の自動能維持において必須であることを明らかにした(Yanagi, Stem Cells, 2007)。2)3)免疫抑制剤のサイクロスポリンA(CSA)がES細胞由来心筋前駆細胞を特異的に増加させるとともに心筋分化誘導効率を約10倍促進させること、及び誘導細胞のラット心筋梗塞モデルへの移植により心筋前駆細胞が従来の心筋細胞移植に比べ約20倍以上高い生体内における心筋再生能を有していることを明らかにしている(Yan, sumitted)。これらの新しい知見により、本研究の目的とするPM細胞分化誘導及び新たな心筋再生治療法の開発に向けた研究の進展が認められた。
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