研究概要 |
研究代表者らは、マウス及びヒトES細胞(胚性幹細胞)を用いて血管および心臓の分化再生研究を行い、Flkl陽性細胞を共通の前駆細胞として、主要な循環器系構成細胞をすべて系統的に分化誘導することが可能な新しいES細胞心血管分化誘導系を構築してきた。本研究は、同システムを用いて、新たな心臓再生治療応用シーズの探索を行うともに、細胞・遺伝子・薬剤など新たな治療応用の可能性を包括的に開拓することを目的とする。1)生物学的ペースメーカ再生法の開発、2)心筋前駆細胞を用いた効率的心筋再生法、3)心筋及び前駆細胞分化誘導因子による新たな心筋再生治療法の開発、及び4)新規心筋再生治療標的分子の探索を行うこととした。2)に関して、免疫抑制剤のサイクロスポリンAが強力な心筋前駆細胞誘導作用を有することを明らかにした。すなわち、ES細胞から誘導・純化したFlkl陽性中胚葉細胞に対してサイクロスポリンAを投与するとFlkl陽性/CXCR4陽性/VE-カドヘリン陰性心筋前駆細胞(FCV細胞:Yamashita, FASEB J, 2005)が従来の約20倍増加した。心筋前駆細胞を特異的に増加させる初めての報告として論文発表(Yan, Biochem Biophys Res Commun,2009)と特許申請を行った。3)に関し純化FCV細胞がラット心筋梗塞モデルにおいて心筋再生に寄与することも示した。1)に関して研究代表者らの知見を含めた総説発表を、4)に関し低分子化合物ライブラリーを用いた心筋分化誘導物質の探索を開始している。またマウスiPS細胞からの心血管分化システムを構築し報告した(Narazaki, Circulation, 2008)。同論文は2008年Circulation誌基礎生物学部門の最優秀論文賞に選ばれた。このように研究計画の着実な進展と重要な成果発表を行った。
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