研究概要 |
申請者らが集積している心筋梗塞発症患者データベースおよび遺伝子バンクを用い、既知の心筋梗塞関連73遺伝子における89単塩基多型(SNP)と予後、およびそれに対する薬剤の影響に関する解析を行った。平成20年12月における登録症例9040例のうち遺伝子解析の承諾を得た2441例において候補遺伝子SNPの解析を行い、心筋梗塞二次予防における主要薬剤であるレニンアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)処方例・非処方例における心血管事故発生率とSNPとの関連を検討した。その結果、ACEI・ARB処方例におけるβ1受容体SNP(389Gly→Arg),β遮断薬処方例におけるアンジオテンシンI型受容体SNP(1166A→C),スタチン処方例におけるリンフォトキシン(LTA)のSNP(804C→A)など複数のSNPが心筋梗塞症例における二次予防薬の心血管事故予防効果に影響を及ぼすことが示唆された(投稿準備中)。次にこれら遺伝子多型の薬剤効果への影響に関する基礎的検討を行い、上記LTAのSNP(804C→A)に由来する変異蛋白(LTA26Asn)は通常のLTA蛋白26Thrに比較して単球と血管内皮細胞との接着を増強するもののその増強効果はスタチンで消失することを確認した(投稿準備中)。また冠動脈疾患症例73例において指尖部脈波における阻血後の反応性充血比を用いて心血管事故の代替エンドポイントとしての血管内皮機能を評価した結果、反応性充血比は各薬剤の服用の有無により各SNP間で一定の差を認めた。
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