研究課題/領域番号 |
19390219
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
長谷川 浩二 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究), 展開医療研究部, 部長 (50283594)
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研究分担者 |
尾野 亘 京都大学, 医学研究科, 助教 (00359275)
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キーワード | 心不全 / 再生医療 / 心筋細胞 / 転写因子 / p300 / 分化 / iPS細胞 / 肥大 |
研究概要 |
心不全のより根本的治療確立のためには心筋細胞情報伝達の最終到達点である核内の共通経路を標的とした治療法を確立する必要がある。我々は内因性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有するp300とGATA転写因子群の協力(p300/GATA経路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した(Mol Ceel Biol 2003;23:3593-606、Circulation 2006;113:679-90)。これにより心筋細胞核のアセチル化、脱アセチル化のコントロールが心不全の進行に中心的役割を果たすことが国際的に認識されつつあり、p300HAT活性が心不全治療の重要なターゲットであると考えられる。最近、健康食品やカレーに用いる香辛料として使用されている天然物ウコンの主成分であるクルクミンがp300の特異的アセチル化阻害作用を持つということが明らかになったが、我々はこのクルクミンが心不全の進行を抑制することを高血圧性心疾患ならびに心筋梗塞後の2つの慢性心不全ラットモデルにおいて証明した(J Clin Invest 2008;118:868-78)。本年度は、p300によるGATA4のアセチル化部位を同定し(J Biol Chem.2008:283:9828-35)、また梗塞後心不全においてクルクミンと心不全の標準治療薬であるACE阻害薬(エナラプリル)が相加的に心機能を改善することを見出した。これらの事実は心筋細胞核内情報伝達を標的とした薬物療法が臨床現場において有用であることを示唆する。一方、心筋細胞の脱落が激しい末期心不全の根本的な治療には心筋再生療法が必須である。体性幹細胞の細胞の増殖能・心筋分化能には限界があり、臨床現場で充分な量の心筋細胞を得るのは極めて困難である。我々は、多分化能と無限増殖能を持つ胚性幹(ES)細胞において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)による刺激が、ヒストンや転写因子GATA4をアセチル化し、心筋分化効率を著明に上昇させることを見出した(J Biol Chem 2005;280:19682-8)。最近、ES細胞と同様の多分化能と無限増殖能を持つ人工多能性幹(iPS)細胞が体細胞への遺伝子導入により作出された。本年度においては複数のマウスiPS細胞株において心筋分化システムを確立し、iPS細胞の株間には大きな分化効率の差異が存在すること、心筋分化効率が極めて低いiPS細胞株でもTSAにより、著明に心筋分化が亢進することを見出した(2008年Regenerative Medicine&Stem Cellで発表)。
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