研究概要 |
マウスおよびヒト肺組織より,肺構成細胞を全てsingle cellとして分離する技術を確立した.この細胞群から,まず血球系マーカーであるCD45でnegative selectionをかけ,フィダー細胞上で培養した.その結果,間葉系の性質を持つ肺組織幹細胞の分離培養に成功した.マウス肺組織幹細胞を用いた細胞治療を,エラスターゼ肺傷害モデルで検討した.その結果,幹細胞を投与することにより,肺傷害の軽減と,肺組織修復の促進が得られることを明らかにした.またこの細胞治療は,肺傷害が完成してからの治療開始でも十分な効果が得られることがわかった.以上の結果は,論文としてStem Cells and Developmentに受理された(doi:10.1089/scd.2009.0287). ヒト肺組織より分離した幹細胞の解析では,この細胞が肺胞II型上皮細胞に分化できること,様々な肺疾患でその増殖が認められることを見いだした.また,この細胞は創薬スクリーニングの良い技術であるために,特許を取得しその産業化に取り組んでいる.これらの内容は現在論文作成中である. また,ヒト肺組織幹細胞を肺胞上皮細胞に分化する技術を開発した.この技術を用い,上皮細胞分化時のマイクロアレイ解析を行い,分化を促す転写因子の候補を明らかにし,さらなる解析を進めた.次年度は,分離したヒト肺組織幹細胞を用い,その分化に関するmicroRNA解析を行う.また,こるの肺組織幹細胞を容易に肺組織から分離するためのマーカー候補を同定した.このことにより,肺疾患におけるこの細胞の重要性の解明,また難治性肺疾患に対する新規治療につながると考えている.
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