研究概要 |
私達は,日本人と欧米人を比較することにより,間質性肺炎・薬剤性肺障害を,臨床像のみならず分子レベルからも解明することを目的として研究を行なっている。本年度は広島県内の呼吸器疾患専門施設,独国RuhrlandクリニックのCostabel教授に協力を仰ぎ,新患の間質性肺炎・薬剤性肺障害約600症例の登録を行なった。同時に,これらの症例の呼吸機能検査,胸部CT画像,病歴などをすべてデーターべース化した。さらに,これらの症例の血清ならびにゲノム検体もすでに広島大学分子内科学教室へ搬送され,匿名化した上で保存している。次年度以降に間質性肺炎・薬剤性肺障害の日欧比較を,臨床像から明らかにする予定である。 一方で,間質性肺炎・薬剤性肺障害の日欧比較を,分子レベルから明らかにする系の確立を行なった。具体的には,KL-6を短時間かつ高速に測定する系,ムチンを中心としたSNPのReal time PCR法を用いた測定系,間質性肺炎のマイクロアレイ解析系,を確立した。本年度はすでに,日本人の間質性肺炎18症例のマイクロアレイ発現解析が終了しており,次年度以降には欧米人の間質性肺炎のマイクロアレイ発現解析を行なうとともに,間質性肺炎の網羅的発現情報解析のデータを約100症例の免疫組織染色,約400症例の血清を同時に測定する迅速血清ELISA系を用いることにより短時間で効率的にスクリーニングし,新規血清診断・予後予測マーカーを同定したいと考えている。 また,本年度は,KL-6制御による間質性肺炎・薬剤性肺炎の治療開発に向けての基礎的検討に備えてKL-6分子の精製を行なった。次年度以降に,KL-6分子の免疫細胞,細胞透過性,発現調節に及ぼす影響について検討を行いたいと考えている。
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