研究概要 |
現在、末期腎不全により、透析療法に至っている患者数は、全国で28万人を越え、今後、糖尿病性腎症の増加、高齢化も加わり、さらに患者数の増加が予想され抜本的対策が急務である。本研究は再生医学的見地より、腎幹細胞を同定する方法として、腎胎生期に出現する遺伝子が、急性腎不全の回復期に、再発現する現象を検討した。申請者らは腎尿細管の分化に重要な意義を持つDelta-1,Notch-Hes systemについて検討を加えている。このシステムは神経系と血液系で発生、分化に重要な役割を持つことが知られているが、申請者らは、これらのDelta-1,Notch-Hesが、腎胎生期に発現することと、急性腎不全の回復期に近位尿細管で再発現することを世界に先駆けて報告している。また慢性腎障害時にはストレスにより酸化した蛋白の分解・清浄化の障害が働いていると考えられ、定常的に機能しているオートファジーの低下による異常蛋白の蓄積と細胞障害が病態に関与している可能性がある。また虚血などによる急性腎不全では、細胞は栄養飢餓状態になり、急速に誘導されるオートファジーの病態への関与が考えられる。しかしながら腎臓病の病態におけるオートファジーの役割については不明であるが、申請者らは、急性腎障害時にオートファジーが、アポトーシスに先行して近位尿細管で起こる事を発表した。さらに急性腎障害で変化する遺伝子がオートファジーを起こす事と、尿細管細胞においてはアポトーシスを防ぐことにより腎保護作用に働く事を米国腎臓学会で報告した。
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