メタボリックシンドロームは内蔵肥満を基盤とし、インスリン抵抗性及びそれを代償する高インスリン血症が病態の本態であると考えられている。メタボリックシンドロームの臨床的帰結は心血管病の発症であり、その診断・治療は心血管病予防のため極めて重要である。メタボリックシンドロームでは高血圧の発症が最も頻度が高く、交感神経系の活性化がその鍵を握っている。しかし、その活性化機序は未だ不明であり、それ故病態の理解に基づく診断・治療へ至っていない。交感神経活動を規定するのは脳幹部に存在する血管運動中枢であり、同部位は肥満に重要な視床下部と脳内で神経性回路を形成している。申請者らは高血圧では血管運動中枢の酸化ストレスの増大により交感神経活動亢進が生じており神経性機序に関与していることを報告してきた(Circulation 2004など)。 従って、本研究の目的は、メタボリックシンドロームで酸化ストレスの増大が脳内機序を介して交感神経活動亢進を生じ、高血圧の発症機転となっているか否かを明らかにすることである。さらに、肥満やインスリンなどによるシグナルが脳内で視床下部から血管運動中枢への脱抑制がその機序として関わっているという仮説を検証する。また、レニン・アンジオテンシン系は循環血液中のみならず脳内にも独立して存在し活性化が生じ、アンジオテンシン1型受容体の活性化は活性酸素の産生源となる。従って、この機構の解明も行う。その重要性が判明すれば、治療薬としてのアンジオテンシン受容体拮抗薬の脳内作用を検討する。 また、臨床研究として、メタボリックシンドローム患者の酸化ストレスを反映する血管内皮機能、交感神経活性化、アンジオテンシン受容体拮抗薬の効果を検討する。
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