研究概要 |
申請者らが開発した,Cre-loxP 系を用いた ADAR2 遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス (ADAR2flox/flox/VAChT-Cre マウス) の解析から,ADAR2活性の消失が緩徐進行性の神経細胞死の原因となること,この分子異常は孤発性 ALS の病因と密接に関連することが明らかになった.ALSにみられる選択的神経細胞死のメカニズムは未解明である,本研究では,ニューロンのADAR2鉄損に対する脆弱性の違いを検討するために,tamoxifen誘導性にCre recmbinase を発現する Cre/Esr1マウス (Jackson lab 004453) と ADAR2 遺伝子の活性基をコードするエクソン部分を LoxP で挟んだ ADAR2flox/flox マウスを掛け合わせ, ADAR2flox/f1ox/Cre/Esr1 マウスを開発した.解析に要するCreを発現するための tamoxifen の至適用量を,行動変化に対するED50値から求め,行動,形態,生化学的変化の解析を行った.連日5日間の180mg/kg投与では,20%のマウスが投与1週以内に,5%のマウスが3週後に死亡したが,1ヵ月の観察期間中には痙攣の誘発はみられなかった.生存したマウスでは,持続的にロータロッドスコアが低下した.脳\脊髄組織における GluR2 Q/R 部位のRNA編集率は早期死亡例では低下していなかったが,3週間以上生存した個体では有意な低下がみられた.脊髄組織より脳組織での低下が顕著であった.ADAR2の免疫組織化学では,運動ニューロン以外でもADAR2の免疫化学的活性を消失したニューロンが増加していた.このことは,神経細胞種ごとに脆弱性を検討することにより, ALS における運動ニューロンの選択的脆弱性を生ずるメカニズムの解析に有用なツールであると考えられる。
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