研究概要 |
孤発性ALS運動ニューロンに認められるRNA編集酵素ADAR2活性の低下は、緩徐進行性の運動ニューロン死を引き起こすことが動物実験で証明されていることから,病因と密接に関連すると考えられる.Tamoxifen誘導性にADAR2をノックアウトするADAR2^<flox/flox>/Cre/Esr1(ADEs)マウスを開発し、tamoxifenを投与することで全脳的にADAR2をノックアウトした。野生型マウスでは、ADAR2免疫活性はニューロンの核のみに局在していたが、染色性の強さはニューロンにより強弱があり、同一の神経核においても、染色活性のばらつきが認められ、海馬錐体細胞で最も顕著にみられた。一方、tamoxifen投与後1ヵ月以上経過したADEsマウスでは、ADAR2染色活性のばらつきがより強く認められ、そのような部位はグリア細胞の増勢がみられた。ただし、外眼筋運動ニューロンの脳神経核では、グリア細胞の増勢はみられず、ADAR2染色性も変化していなかった。これに対し、顔面神経核には脊髄前角と同様著明なグリオーシスが認められた。以上のことから、ADAR2ノックアウトによる神経細胞死は脊髄運動ニューロンのみならず、脳神経核、海馬・大脳皮質のニューロンにも及ぶこと、ADAR2がノックアウトされても細胞死を生じないニューロンも存在すること、が明らかになった。ADAR2ノックアウトによるニューロン死には、AMPA受容体を介する過剰なCa^<2+>流入が関与しているので、細胞種による脆弱性はCa2+に対する脆弱性(緩衝システム)に起因する可能性が高い.
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