研究概要 |
孤発性ALS患者脊髄に生じている疾患特異的分子異常を再現した分子病態モデルマウスAR2マウスを作成し,この変異マウスの解析により、以下のことを明らかにした。1)GluR2Q/R部位のRNA編集(A-to-I変換)は専らADAR2により行われる。2)AR2マウスは緩徐進行性の選択的運動機能障害、運動ニューロンの変性脱落を呈する。3)ADAR2缺損が緩徐進行性の神経細胞死の直接原因になる。4)その分子メカニズムは、ADAR2活性低下によりQ/R部位未編集型GluR2が発現することであり、AMPA受容体のCa2+透過性亢進によると考えられる。ADAR2缺損によるGluR2Q/R部位以外でのRNA編集効率低下は神経細胞死に関与しない。5)運動ニューロンの内、外眼筋運動ニューロンはADAR2活性低下による運動ニューロン死に抵抗性が高く、ALSにおける病変の選択性を再現している。以上のように、AR2マウスは孤発性ALSの分子病態を反映し、表現型もALSに類似することから、ALSの病因解明、治療法開発にとり有用なツールになると考えられる。
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