研究課題/領域番号 |
19390238
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 章景 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30378012)
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研究分担者 |
祖父江 元 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20148315)
足立 弘明 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, COE特任講師 (40432257)
勝野 雅央 名古屋大学, 高等研究院, 特任講師 (50402566)
飯島 正博 名古屋大学, 医学部附属医院, 医員 (40437041)
道勇 学 愛知医科大学, 医学部, 特任教授 (90293703)
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キーワード | ALS / 運動ニューロン / dynactinl / 遺伝子発現解析 / 線虫 / 疾患モデル |
研究概要 |
我々はレーザーマイクロダイセクション法による孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者脊髄からのサンプリングによって、運動ニューロン特異的遺伝子発現プロファイルを作成し、多くのALS病態関連分子を同定してきた。これらの遺伝子発現動態を検討した結果、運動ニューロンにおけるdynactinlの遺伝子発現レベルの低下が神経変性過程の上流で生じていることが明らかになった。そこで、この遺伝子発現低下を線虫に展開することにより、孤発性ALSの病態を反映する疾患モデルの開発を行った。コリン作動性運動ニューロン特異的なプロモーターであるacr-2支配下に、ヒトdynactinlの相同体であるdnc-1を標的としたshRNAを発現可能なベクターを作成し、野生型線虫にマイクロインジェクションし変異体を作成した。コントロール群として、線虫とは無関係なLacZ遺伝子を標的としたshRNAを発現させた。dnc-1ノックダウン群はコントロール群に比して、生存率の短縮、首振り回数の低下、水中でのむち打ち回数の低下が認められた。さらにノックダウン群においては、より運動機能障害が重篤な個体においてCoileruncordinatedの表現型が認められた。この表現型は、コリン作動性運動ニューロンのVAニューロンの正常なシナプス形成に必須であるunc-4遺伝子の種々の変異体で出現し、運動ニューロンの機能障害と変性を示唆する所見である。またノックダウン群においては、ventral cordの形態異常が認められ、運動ニューロンの変性を示唆する所見と考えられた。さらに我々は、孤発性ALS運動ニューロンで実際に観察されるいくつかの重要な分子病態をこの線虫モデル、さらには培養細胞モデルにおいて再現することに成功し、これらが孤発性ALSの有用な疾患モデルになりうると考えられた。
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