研究概要 |
紀伊半島に多発する筋萎縮性側索硬化症(ALS)/パーキンソン認知症複合(PDC)の原因と発症機構を解明するために、分子遺伝学的、免疫組織化学的、生化学的検討を行った。 1.家族性発症例を対象に、ALS/PDCと共通性があるALS,パーキンソン病、認知症の原因あるいはリスクとして知られている既知の遺伝子を調べ、異常な変異や遺伝子量増加は認められなかった。ゲノムワイドの遺伝子解析も進行中である。検索対象として遺伝子を次に示す。 (1)ALSと前頭側頭葉変性症の関連遺伝子:SOD2,SOD3,ALS2/alsin,SMN1,PGRN,ANG,VEGF,VCP,VAPB,DCTN1,CHMP2B,and TARDBP(TDP-43) (2)タウ異常症関連遺伝子:tau,GSK3β (3)パーキンソン病関連遺伝子:α-synuclein,LRRK2,parkin,DJ-1,PINK1,and AIP13A2 2.病態・病理、生化学的研究 (1)紀伊ALS/PDC脳のアルツハイマー神経原線維変化(NFT)の分布様式と出現量を半定量的に調べ、分布様式は基本的に同じで、出現量はALS例では少なくPDC例の方が多かった。 (2)紀伊ALS/PDCの6剖検例について、脳と脊髄の切片を抗TDP-43抗体で免疫組織学的に調べ、全例において海馬歯状回に細胞内封入体を認め、脊髄前角細胞内にはTDP-43陽性「糸かせ様封入体」を認めた。本疾患は生化学的には「タウとTDP-43タンパクの異常蓄積症」とみなし得る。 (3)紀伊ALS/PDCの11例について、DNAの酸化ストレスによる障害のバイオマーカーである尿中の8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)値を測定し、対照例に比して有意に上昇していた。神経変性での酸化ストレスの関与が示唆された。 (3)紀伊ALS/PDCの11例について、DNAの酸化ストレスによる障害のバイオマ』カーである尿中の8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)値を測定し、対照例に比して有意に上昇していた。神経変性での酸化ストレスの関与が示唆された。
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