研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は原因不明の致死性神経変性疾患である。研究代表者は変異SOD1の細胞外分泌がALSの病態を説明できることを報告し,変異SOD1タンパクを用いたワクチン療法が有効であることを報告した。本研究はさらに効果的な免疫療法の開発と,機序の解明を目指すものである。平成19年度の進捗状況は以下の通りである。 1.ワクチン療法の応用性の検討と,効果メカニズムについての研究;変異SOD1トランスジェニックマウスの繁殖を開始し,6月より組換えタンパクによるワクチン接種を開始した。低発現型ではG93A変異SOD1による発症遅延効果が見られ,寿命も軽度延長する傾向にある。さらにヒト野生型SOD1も生食+アジュバントコントロールに比し,発症遅延効果が認められる。現在実験マウスを増やし,今後抗体価との関連,病理所見を解析する。 2.変異タンパク特異認識抗体を用いた抗体療法の確立;ハイブリドーマをSCIDマウスの腹腔内に移植し,腹水から抗変異SOD1モノクローナル抗体の大量精製に成功した。新生児に脳室内投与を計画していたが,より効果的な髄腔内投与法を確立した。今後発症直後のマウスに対して投与実験を行うべく繁殖中である。 3.変異タンパク特異認識抗体を産生するハイブリドーマの,生体適合物質を用いたカプセル化細胞移植実験研究;アルギン酸ナトリウムを用いた微小カプセルの作成を試みた。カプセル形成のためのキレート剤の最適化,サイズの小型化、ハイブリドーマの長期生存と抗体産生のための条件設定を行い,2種類の条件に絞り込んだ。今後さらに最適化に向けて研究を行い,腹腔内移植による血清抗体価上昇を目指す。 4.選択的運動ニューロン死におけるグリア細胞の関与について;変異SOD1トランスジェニックマウスの脳幹部を用いて,運動ニューロン死とグリア細胞の組織学的解析を行っており,選択的運動ニューロン死とグリア細胞の関与を示す知見が得られている。 以上より,平成19年度は予定通り順調に進行している。
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