本年度は研究計画の最終年度として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のワクチン療法の改良と作用機序の検討と抗体療法の効果の確認を行い、さらにミクログリアのALS病態への関わりにっいてのこれまで我々が得られた知見をまとめ、情報発信することを主眼とし、研究を進めた。平成21年度の進捗状況は以下の通りである。 1.ワクチン療法の応用性の検討と、効果メカニズムについての研究;SOD1に変異を有する家族性ALSに対するワクチン療法の変異型に依らないアポ型野生型SOD1ワクチンの効果をG93A型変異トランスジェニックマウスを用いて検討した結果、G93A型ワクチンに比べむしろ寿命延長効果が高かった。生存効果はIgG2bに正相関しており、さらに脾臓組織のTGFβの発現がIgG2bと有意に正相関していた。またワクチン投与群の脊髄組織ではinterferonγの発現が有意に低下しており、特に野生型ではこの効果が著明であった。本知見は現在投稿準備中である。 2.変異タンパク特異認識抗体を用いた抗体療法;昨年度は変異SOD1認識モノクローナル抗体の髄腔内投与法を確立したが、変異SOD1特異認識抗体であるC4F6抗体の髄腔内投与は抗体濃度をやや低くし、投与期間を発症直後から42日とより長期にすると進行が対照群(生理食塩水)に比べ、24%延長した。またC4F6のFabを精製し投与したところ無効であり、この効果は中和作用ではなく細胞外の変異SOD1の除去によると考えられた。今後組織化学的検討を進め論文投稿をする予定である。 3.選択的運動ニューロン死におけるミクログリア細胞の関与について;細胞外の変異SOD1による運動ニューロン死の機序解明研究を行い、本年はG93Aに加えG85Rにおいても同様に、ミクログリアのCD14を介して炎症性サイトカインの発現を促し、IGF-1の発現を抑制することを解明した。この結果を国際学術誌であるGliaに投稿し採択された。以上より、最終年度もほぼ当初の計画通り進行し、今後の研究継続によりさらなる成果が期待される。
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