研究概要 |
近年の分子遺伝学、臨床遺伝学の進歩により、多くの脊髄小脳変性症の遺伝子異常が判明してきた。ほとんど全ての遺伝子がわかったかの印象があるが、実際には60%程度の症例でしか、既知の遺伝子異常は見つかっていない。特に常染色体優性遺伝の症例では多くの遺伝子異常が明らかになっているにも関わらず、常染色体劣性脊髄小脳変性症の原因遺伝子はまだ数個しか明らかになっていない。したがって、劣性の家系を検索し、新たな原因遺伝子を見いだすことは、重要である。 以下の研究は、広島大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会の承認を受け、参加者の書面による同意を得たものである。 常染色体劣性遺伝を示す家系を検索し、既知の遺伝子異常を除外した結果、2つの脊髄小脳変性症家系を解析対象とした。1家系においては,発症者2人にその同胞の非発症者およびその母親、もう一家系においては発症者のみ2人のDNAを、Affymetrix 500K chipにかけて、各々約50万個のSNPを決定した。 個々のSNPの情報をホモ接合性指紋法により、連続したホモ接合の領域を抽出した。各家系において、発症者間で重なり合うホモ接合領域を原因遺伝子の存在領域と想定されるので、この領域に対応するオリゴヌクレオチドをチップ上に合成し、関心領域のDNAを分取できるよう、オリゴヌクレオチドの設計、デザインを行った。これにより、実際に目的とするDNA領域を分取し、次世代シーケンサーにより、その塩基配列を決定した。リファレンス配列と比較し、新規の1塩基多型を複数個同定し、脊髄小脳変性症の候補遺伝子を見いだした。
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