研究課題/領域番号 |
19390242
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飛松 省三 九州大学, 医学研究院, 教授 (40164008)
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研究分担者 |
緒方 勝也 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (50380613)
前川 俊彦 九州大学, 病院, 助教 (40448436)
中島 祥好 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (90127267)
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キーワード | 脳の時計 / 時間知覚 / 非侵襲的脳機能計測法 / 神経疾患 / 精神疾患 |
研究概要 |
脳の中の時計が、どこにあるかを解明するために、2つの実験を行った。1つは「時間間隔の同化現象」である。これは隣接する2つの時間間隔(t1とt2)の異同判断を行うと、物理的に等間隔でなくても等しく見積もるという錯覚である。2つ目は情報処理過程の自動処理を反映するとされるミスマッチ陰性電位(MMN)を用いた研究である。MMNはヒトにおける感覚入力の自動的情報処理の指標である。入力情報は以前の記憶と比較照合され、変化があれば不一致(ミスマッチ)となり、MMNが出現する。 前者においては、心理学的・行動学的に確認されている聴覚および視覚における「時間間隔の同化現象」のメカニズムを心理実験と事象関連電位(ERP)で検討した。3つの連続する純音あるいは視覚パターン(正弦波格子縞)の区切り間隔を細かく変えて、そのときの心理学的な時間弁別の正答率、ERPを計測し、時間の同化現象に関連する電位成分の検出を試みた。聴覚では-80≦t1-t2≦0msで、視覚では-80≦t2-t1≦40msの範囲で時間間隔を等しく見積もった。聴覚ERPでは右前頭部に緩徐に持続する陰性成分が出現し、この成分が課題遂行に関わる刺激予期と時間判断の複合成分と考えられた。 一方、MMNでは臨床応用の少ない視覚MMNに特化して研究を進めた。視覚MMNは注意の向きに強く影響されるため、ウインドミルパターンを用いた。後頭部から記録されるMMNをより精密に抽出するため、工学的な特徴抽出パラメータを計算し、健常者群と統合失調症群を判別する線形回帰式を考案できた。 時間間隔の同化現象は聴覚と視覚で異なることが示された。また、右前頭部が時間認知に関わっている可能性が得られた。これらの脳内機序を明らかにするために、128ch高密度脳波計、306ch脳磁図を用いてさらに時系列的解析を進める。また視覚MMNでは、統合失調症やうっ病に応用し、その病態生理を解明したい。
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