研究課題/領域番号 |
19390242
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飛松 省三 九州大学, 医学研究院, 教授 (40164008)
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研究分担者 |
緒方 勝也 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (50380613)
重藤 寛史 九州大学, 大学病院, 講師 (50335965)
中島 祥好 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (90127267)
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キーワード | 脳の時計 / 時間知覚 / 非侵襲的脳機能計測法 / 神経疾患 / 精神疾患 |
研究概要 |
昨年度までの2年間で「脳の中の時計」が、右前頭部にあることが示唆された。そこで、最終年度は、306ch全頭型脳磁計(MEG)を用いて「時間間隔の同化現象」の脳内メカニズムを詳細に検討した。また、自動的認知過程の指標であるミスマッチ陰性電位(MMN)に関してもさらに検討を加えた。 MEGでは、最小ノルム法により、脳の時系列的反応変化を定量的に解析した。聴覚の同化現象時には最近、注目されているWhen経路(後頭・側頭接合部→右前頭前野)の活動が可視化された。この所見が多数例で再現されるかどうか現在検討中である。この研究成果の一部、すなわち、聴覚の時間縮小錯覚課題により右前頭部が時間間隔の作業記憶と異同判断を行っているという結果は、Attention, Perception & Psychophysics(71(5):986)のニュースに「Time Perception : ERP analysis of Temporal Assimilation」として取り上げられた。 MMNでは、聴覚に比べて臨床応用が少ない視覚MMNを検討した。視覚MMNの記録精度を向上させるために、定量的な波形解析を試みた。視覚MMNの波形の特徴パラメータを工学的に抽出し、健常者群と統合失調症群を判別する線形回帰式を考案した。次に、視覚MMNを統合失調症、うつ病において記録し、その病態生理を検討した。視覚MMNの異常が両群で認められ、自動的処理過程の異常が聴覚のみならず視覚においても存在することを報告した。この結果は、統合失調症では外界の刺激に対して無関心であるが、視覚MMNの異常は前注意処理過程にも障害があることを示唆する。うつ病においても自動処理の障害があり、今後、その脳内基盤を研究する必要がある。 3年間の研究を総括すると、心理学的には時間間隔の同化現象が聴覚と視覚で異なることが示された。また、右前頭部が時間認知に関わっている可能性が得られた。情報入力の自動処理過程を反映するMMNが精神疾患の病態を解明するのに有用な手段であることが確認された。
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