研究概要 |
PI3Kの活性化はβ細胞の増殖に重要であると考えられるが,これを証明するため膵β細胞特異的にpik3rl遺伝子をノックアウトしたマウスβpik3r1KOを,またpik3r2 nullマウスとβpik3r1KOを交配させて,β細胞特異的な調節サブユニットの完全ノックアウト(βp85DKO)マウスを作成した。PI3K調節サブユニット量は,ラ氏島においてβpik3r1KOマウスで80%程度低下しており,βp85DKOマウスではほぼ完全に消失していたが,他の臓器では全く変化がなかった。βpik3r1KOマウスではPI3Kシグナルは大幅に減弱しており,βp85DKOマウスではさらに減弱していた。両マウスとも,グルコース負荷によるインスリン分泌の低下が認められ,βp85DKOマウスでは特に耐糖能が著明であった。また,グルコースに対するインスリン分泌能は,両マウスともことに第1相の消失が認められ,βp85DKOマウスでは全体にインスリン分泌の低下が認められた。一方,KClに対する反応はほぼ正常であった。単離ラ氏島を用いてインスリン分泌を測定しても,両マウスのラ氏島でインスリン分泌の低下が確認された。一方,インスリン疫染色によってβ細胞量を評価すると,両マウスともβ細胞量が減少しており,ことにβp85DKOマウスの減少が大きかった。これらのことから,PI3K活性の低下によるβ細胞量の低下に加えてインスリン分泌能の低下も示唆された。現在,cDNAマイクロアレイにて,遺伝子変化を網羅的にことにインスリン分泌機構に注目して検討している。
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