研究概要 |
肥満の脂肪組織で11β-HSD1活性が亢進するメカニズムに関して肥満脂肪組織で普遍的に観察される炎症シグナルの亢進や酸化ストレスの亢進において11β-HSD1の活性化が関与する可能性をin vivo,in vitroの系で検証した。3T3-L1脂肪細胞やヒト、マウスの肥満脂肪組織から調整したSVF cellによる初代培養脂肪細胞系を用いてTNFαやIL-1β,LPS(TLR4シグナル)が誘導するMAPK,NF-κBシグナルを3種類の11β-HSD1阻害剤が抑制する可能性をMAPK p38,JNK,ERKのリン酸化、NF-κB p65リン酸化などを指標とするウエスタンブロットで検証した結果、11β-HSD1の阻害がNF-κB、MAPK炎症シグナルの増強を抑制することが初めて明らかとなった。また、酸化ストレスに関してはROS産生酵素であるNADPH oxidase構成分子群の発現レベル、NBTアッセイによるROS産生能を指標として解析した結果、11β-HSD1阻害が脂肪細胞の酸化ストレス軽減をもたらすことが初めて明らかとなった。また、11β-HSD1の最大活性化に必要な補因子、NADPHを供給し、それ自体が酸化ストレス誘導因子、中性脂肪合成の鍵分子の一つでもある酵素、G6PDの"肥満脂肪組織機能異常"における病態的意義に注目した研究を進めた結果、培養脂肪細胞系におけるヒト型G6PDの過剰発現が11β-HSD1酵素活性を顕著に誘導し、培地中へのコルチゾル分泌を有意に増加させることが明らかとなった。この知見を踏まえ、脂肪組織特異的にヒト型G6PDを過剰発現させる新規の遺伝子改変マウスの作出に新規に成功し、現在、これらの遺伝子改変マウスの代謝表現型の解析、栄養学的介入実験を進めている。
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