心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患は国民の死因の3分の一を占め、その予防は重要な健康対策課題である。申請者はメタボリックシンドロームの責任臓器としての脂肪組織に焦点を絞った研究を一貫して行い、脂肪細胞の新たな分子を同定するとともに、生体における機能解析を行うとともに、その異常がメタボリックシンドロームの病態の分子基盤となっていることを明らかにしてきた。本研究は低adiponectin血症を中心に、心血管病における脂肪細胞の意義を明らかにしようとするものである。1)メタボリックシンドロームでは全身のレニン・アンジオテンシン系が活性化され、酸化ストレスが増加している。adiponectinはアンジオテンシンにより傷害を受けた心筋組織に集積した。Adiponectin欠損マウスは、野生型より心筋の酸化ストレス関連遺伝子や線維化関連遺伝子の発現が亢進し、強い心機能低下を示した。これらの変化はadiponectinの強発現により改善した。培養心筋細胞を用いた検討によりadiponectinはアンジオテンシンによるERK活性化、PPAR-alpha阻害のシグナルを抑制し、これが酸化ストレスの増加や線維化抑制に繋がることを示し、報告した。Adiponectin欠乏は臓器酸化ストレス蓄積、臓器線維化を悪化させると考えられた。2)大規模集団において血中adiponectin濃度、内臓脂肪量を測定し、両者が逆相関関係にあることを示し、今回新たに高尿酸血症の説明変数となることを示し、報告した。3)私達が発見し、脂肪細胞においてグリセロールチャネルとして機能していることを明らかにしたaquaporin7について、心筋における機能解析をおこない、心筋グリセロールチャネルとして機能しATP産生に関わることを明らかにした。
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