転写因子KLF15の糖新生系酵素遺伝子の発現制御における機能について、特に抗糖尿病薬メトホルミンの作用機構との関連について解析を行った。培養肝細胞をメトホルミン処理すると、KLF15の発現とともにPEPCKやHPDの遣伝子発現が低下した。メトホルミン処理した細胞にアデノウイルスを用いて外来性にKLF15を再発現させると、メトホルミンによるPEPCKやHPDの遺伝子発現抑制作用がほぼ完全に消失した。以上の結果より、メトホルミンの糖新生抑制作用はKLF15の発現抑制により生じることが示唆された。また、メトホルミンによるKLF15の発現抑制は遺伝子発現の抑制とともに、ユビキチン化を促しプロテアソーム依存性の蛋白分解を促進させることによっても生じることが明らかとなった。また、メトホルミンのKLF15蛋白の分解を促進作用はAMPK依存性であることも明らかとなった。個体レベルでメトホルミン作用へのKLF15の関与の詳細について検討するため、グルコースクランプ法によりメトホルミンによる肝糖産生抑制作用への影響を検討した。メトホルミンの投与により、肝臓におけるKLF15、糖新生系酵素、アミノ酸異化系酵素の発現は低下したが、アデノウイルスを用いて肝特異的にKLF15を再発現させることにより、これらの遺伝子発現の低下は回復した。さらに、外来性にKLF15を再発現させたマウスではメトホルミン投与による肝糖産生抑制作用は減弱し、個体レベルにおいてもKLF15はメトホルミンの糖産生抑制作用の発現に重要な役割を果たすことが示唆された。また、転写因子Stra13の機能についても解析を行いStra13はインスリンによるSREBP1cの発現誘導を通じて個体レベルの脂質代謝制御に重要な機能を果たすことも明らかとなった。
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