研究課題/領域番号 |
19390252
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井上 金治 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50091963)
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研究分担者 |
足立 明人 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20351588)
冨田 幹夫 埼玉県立がんセンター, 臨床腫瘍研究所, 専門員 (80142115)
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キーワード | メタスチン / 前腹側室周囲核(AVPV) / 視床下部弓状核(ARC) / エストロゲン / 時計遺伝子 / LHサージ / がん転移 / アポトーシス |
研究概要 |
メタスチンの発現は視床下部弓状核(ARC)と前腹側室周囲核(AVPV)に分布し、それぞれの領域がGnRHのパルス状、及びサージ状の分泌への関与が示唆される。齧歯類のAVPV領域におけるメタスチンの発現にはエストロゲンによる正のフィードバックと体内時計による複合的な制御が明らかとなっているが、そのメカニズムの詳細は明らかとなっていなかった。そのため、メタスチンプロモーターを単離し、時計遺伝子の働きを検討した結果、ほとんどの時計遺伝子はプロモーター活性に影響を与えなかったが、唯一時計遺伝子Aのみがプロモーター活性を有することが明らかとなった。その効果はエストロゲンによる転写と相乗的に働いた。さらに、発情間期と発情前期の早朝と夕刻でメタスチン、及び時計遺伝子Aの発現を調べた結果、両者はともに発情前期の夕刻に強い発現を示し、両者に強い相関が見られた。これらの結果から、AVPV領域におけるメタスチンの発現の時刻制御は時計遺伝子Aによる制御が強く示唆された。一方、メタスチンのGnRH神経に対する作用部位はまだ明確になっていない。このため、メタスチンとGnRH神経を免疫細胞化学染色により詳細に検討した。この結果、正中隆起部においてメタスチン神経とGnRH神経が密に接触する部位が観察され、メタスチンが正中隆起部でGnRH神経に作用することが考えられた。 本研究ではメタスチンとがん転移に関しても研究を進めた。メタスチンは種々のがん細胞に作用して、シグナル伝達分子ERK1/2を活性化した。この作用はメタスチン受容体GPR54の発現と相関した。メタスチンはがん細胞の増殖やアポトーシスに影響をあたえなかったが、乳がん細胞や膵がん細胞の運動能を抑制した。
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