研究課題/領域番号 |
19390258
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 滋 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (60212049)
|
研究分担者 |
熊野 恵城 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90396721)
坂田 麻実子 (柳元 麻実子) 東京大学, 医学部附属病院, 医員 (80451805)
|
キーワード | Notch / 白血病 / 細胞環境 / 遺伝子異常 |
研究概要 |
腫瘍細胞内におけるNotchシグナル亢進による腫瘍化の分子基盤を分析し、さらに生体内の腫瘍細胞環境においてNotchシグナルが果たす役割を明らかにすることを目的とした本研究で以下の実績を得た。 (1)分化が進み2週間程度の増殖能しかもたない顆粒球系骨髄前駆細胞に、Notchシグナルの標的分子であるHes-1を発現させ培養したところ、再現性よく1年以上にわたり増殖し続けた。しかし放射線照射した同系マウスに移植しても、白血病は発症しなかった。 (2)ヒト急性リンパ性白血病(T-ALL)の多くではNotch1遺伝子の活性化型変異があり、リガンド非依存性に、しかしNotch活性化に必須の酵素であるγ-secretase依存性に、Notch1を介するシグナルが活性化される。従ってγ-secretase阻害剤(GSI)はNotch遺伝子活性化型変異を有する細胞でもNotchシグナルを阻害する。Notch1変異を有するヒトT-ALL細胞株DND-41を皮下に移植するモデルでは、GSI投与により著明に腫瘍が縮小する。この現象が、白血病細胞内在性のNotchシグナル抑制の他、腫瘍環境におけるNotchシグナル阻害も関与しているかを検証する目的で、DND-41細胞に恒常的活性化型Notch1(NICD)のcDNAを導入し、in vitroでは完全にGSI耐性化した細胞(NICD/DND-41)を樹立した。DND-41およびNICD/DND-41を免疫不全マウスに移植してGSIを投与すると、NICD/DND-41はDND-41に比べ有意にGSIへの反応性が低下していたものの、in vitroと異なり、明確な腫瘍増殖抑制効果が観察された。従って、GSIは腫瘍細胞内在性のNotchシグナルを抑制する他、腫瘍環境におけるNotchシグナルを阻害することで、強力に腫瘍縮小効果を示すと考えられた。
|