研究概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I: HTLV-I)は成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)の原因ウイルスであるだけでなくHTLV-I関連脊髄症(HAM/TSP)、HTLV-Iぶどう膜炎、関節症、Tリンパ球性肺胞症などの炎症性疾患をも惹起する。本研究ではHBZ遺伝子がHTLV-I感染、関連疾患の病態において果たす役割を解析し、その意義を明らかにすることを目的とする。 1) HBZトランスジェニックマウス由来Tリンパ球の遊走能、接着能 HBZトランスジェニックマウスのCD4陽性Tリンパ球を分離し、ICAM1コートプレートに対する接着能を解析したところ、HBZトランスジェニックマウス由来Tリンパ球はコントロールに比べて接着能が亢進していた。また遊走能も亢進していた。 2) HBZ RNA,タンパク質と相互作用する宿主因子の解析 HBZタンパク質と結合する宿主因子をyeast two-hybrid法により単離した。bZIPドメインを有するタンパク質が多く同定されたが、その中でATF3はHBZとbZIPドメインで結合していることが確認された。ATF3はp53の機能を亢進するがHBZの結合により、この作用が阻害されることが明らかとなった。 3) HBZトランスジェニックマウスの疾患感受性 HBZトランスジェニックマウスにexperimental autoimmune encephalitis (EAE)を惹起させ、その進行・重症度を観察すると共に、神経組織への浸潤リンパ球、サイトカイン産生に関して解析を行った。HBZトランスジェニックマウスでは進行が若干早かったが、後期にはコントロールとの違いは認めなかった。しかし、HBZトランスジェニックマウスでは接種後にCD4陽性Tリンパ球の増加が認められた。
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