研究概要 |
がん特異的CTL養子免疫療法における最大の課題は、high affinityのT細胞レセプター(TCR)を発現しているCTLを大量に誘導することである。我々は、すでに樹立したWT1特異的CTLクローンTAK-1(Ohminami, Yasukawa, et al. Blood2000)からTCR遺伝子を単離し、その発現ベクターを構築した。さらに、末梢血リンパ球ならびに造血幹細胞に遺伝子導入し、その機能を解析した。WT1特異的HLA-A24拘束性CTLクローンTAK-1からTCR遺伝子をクローニングし、レンチウイルス発現ベクターおよびレトロウイルスベクターを作製した。健常人末梢血リンパ球に遺伝子導入し、WT1特異的TCRの発現を、テトラマーを用いて解析した。また、TCR遺伝子導入細胞のペプチド添加細胞ならびに各種白血病細胞に対する細胞傷害性を検討した。さらに、臍帯血CD34陽性造血幹細胞に遺伝子導入した後、新たな免疫不全マウスであるNOD/SCID/commonγ^<rull>マウスに移植した。移植が約3ヶ月後に、脾細胞および骨髄細胞に含まれるWT1特異的TCR発現ヒトT細胞をテトラマーを用いて検出するとともに、ペプチド刺激によるIFN-γ産生を検討した。健常人末梢血CD4およびCD8陽性T細胞に遺伝子導入したところ、効率よくTAK-1由来TCRの発現が確認された。TCR遺伝子導入CD8陽性T細胞はTAK-1同様に、HLA-A24拘束性に白血病細胞に対して細胞傷害性を示したが、正常細胞には全く影響を与えなかった。他方、WT1特異的TCR遺伝子導入ヒト造血幹細胞移植免疫不全マウスからWT1特異的TCRを発現するヒトT細胞が分化、増殖することが確認された。これらのT細胞は、WT1ペプチド特異的にIFN-γを産生したことから、機能的にもWT1特異性を有していることが確認された。
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