研究概要 |
PMLは、核内のPML body/Nuclear body(NB)と呼ばれる斑点状の領域に局在し、様々な転写因子や転写コアクチベーターと複合体を形成して転写を制御するが、その制御機構については不明な点が多い。Pml遺伝子欠損マウスでは顆粒球減少が見られることから、PMLは正常顆粒球分化に関与していることが考えられる。我々は、PMLが造血に必須な転写因子AML1、PU.1、C/EBPeなどと複合体を形成して造血細胞の分化を制御すること、これらの制御には転写コアクチベーターHIPK2・p300・MOZが重要であることを明らかにしてきた。さらにPMLはリン酸化やSUMO化といった翻訳後修飾を受けるが、リン酸化やSUMO化部位を欠損させたPML変異体ではPMLによる顆粒球分化の促進が見られないことから、これらの修飾が顆粒球分化に重要であることが示唆された。またPML複合体の精製の結果、PMLはユビキチンリガーゼSCF複合体の構成因子Fbx3と結合し、SCF^<Fbx3>によるユビキチン-プロテアソーム経路を介する転写コアクチベーターの分解を阻害することを明らかにした。この結果より、PMLはNBで転写因子複合体の形成の足場となるだけではなく、転写因子複合体に含まれる構成因子の安定化を誘導することで、AML1やPU.1などを介した転写を活性化し、顆粒球分化を誘導することが示唆された。一方、PML遺伝子は急性前骨髄球性白血病の大多数の症例に見られるt(15;17)染色体転座によりRARa遺伝子と融合する。その結果生じるPML-RARaは野生型PMLの機能を抑制し、NBを拡散させることが知られているが、PML-RARaはHIPK2を著しく不安定化させ、PU.1やAML1を介した転写を抑制した。また、急性骨髄性白血病ではしばしばPMLと結合するAML1,HIPK2,p300,C/EBPaの変異が見られ、白血病発症にこれらの転写因子複合体の機能阻害が関与することが示唆される。
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