研究課題
関節リウマチ(RA)に対する新たな治療法がサイクリン依存性キナーゼ群を標的とすることの妥当性を検証しつつ、阻害薬の開発を試みた。この概要では、現時点で公表可能な低酸素状態が関節リウマチ滑膜細胞増殖に及ぼす影響をサイクリン依存性キナーゼ阻害因子活性化の観点から探索した研究結果について記す。滑膜線維芽細胞(RASF)の無秩序な増殖はRAの病理的特徴である。またRA滑膜は比較的低酸素状態にあるとの報告があるので、低酸素状態がRA滑膜の増殖やサイクリン依存性キナーゼ(CDK)とその阻害因子(CDKI)に及ぼす影響を探索した。まず、低密度で培養したRASFは低酸素(1%02)の影響を全く受けなかったが、高密度培養にすると、正常酸素分圧では接触阻害による成長抑制が認められたものの、低酸素ではその影響が認められなかった。この現象は、ヒト皮膚線維芽細胞では認められず、RASFのみで認められた。この現象は、抗腫瘍壊死因子α抗体やインターロイキン1受容体アンタゴニスト添加でも認められた。この際、正常酸素分圧ではサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27Kip1の上昇が認められたものの、低酸素下では認められなかった。また、低酸素はRASF上のN-カドヘリン発現を減少させた。抗N-カドヘリン抗体は低酸素と同様に高密度培養下でのRASFの増殖を抑制し、p27Kip1発現も低下させていた。RA滑膜組織の低酸素は、RASF増殖を促進することによって、RA病態を悪化させているようである。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
J Rheumatol 36
ページ: 698-705
J Immunol 180
ページ: 1954-1961