我々は経口摂取されたTGF-βが生体内でも機能すること、経口免疫寛容あ増強効果があり食物抗原への感作を抑制できることをこれまでの研究によって明らかにしてきた(科学研究費補助金ほか)。この知見によって、将来、飲食物にTGF-βを加えるといった非常に簡便な方法によって食物アレルギーなどのアレルギー性疾患の発症が予防できる可能性が示唆された。 本年度は、TGF-βを含有するとされている牛乳が、殺菌や加工などの工程を経たあとにおいても、TGF-β濃度及び活性を保持しているか否かについてin vitroとin vivoの実験系を用いて検討した。その結果、市販の牛乳の多くはng/mlオーダーのTGF-β濃度を保持し、in vitro及びin vivoでその活性を維持していることがわかった。興味深いことに、市販の牛乳中のTGF-βは大部分が活性型に既に変換されていた。殺菌等の過程で高温にさらされることが関係している可能性がある。また市販の牛乳をマウスに摂取させることによって炎症性腸疾患や敗血症の発症を予防することができることも明らかになった。 いずれにせよ市販の牛乳を摂取することによってもある程度の量のTGF-βを経口摂取でき、かつ生体内でもそのTGF-βは活性を保ち機能を発揮することができることが明らかになった。したがって、TGF-βそのものの投与ではなく、牛乳のような乳製品の積極的な摂取もアレルギー性疾患の発症予防に影響を与える因子となる可能性が示唆された。
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