本研究の目的は経口的TGF-β投与によるアレルギー反応抑制のメカニズムを解明し、かつヒトへの応用に向けての疫学的検討を行うことである。 本年は、研究実施計画通りTGF-β経口投与によるアレルギー疾患の治療効果について主に解析した。NC/Ngaマウス皮膚にダニ抗原塗布を繰り返しアトピー性皮膚炎モデルマウスを作成した。約2週間後の皮膚炎形成後から、経口的にTGF-βを摂取させ、マウス皮膚炎に対する治療効果、免疫系への影響(T細胞反応、抗体/サイトカイン産生への影響)等について検討した。 その結果、すでに完成されたマウス皮膚炎病変については、TGF-βの経口投与(5μg/マウス、週に3回投与、2週間継続)は、肉眼的及び病理学的な皮膚炎の評価、血中IgE抗体値、病変部サイトカイン産生量において変化を認めず、今回採用した経口TGF-βの摂取方法では、その効果がないことが明らかになった。今後は、量や投与回数を増やす、アレルゲンと一緒に投与するなどの工夫を加えて、TGF-β経口投与によるアレルギー疾患の治療効果について検討したい。 また山梨県甲州市の母親達のご協力をいただき、約40人分の健常人母乳サンプルを収集し、母乳中に含まれるTGF-βの濃度についてELISA法で測定した。現在、このデータを、母親の身体的プロフィール(身長、体重等)、家族構成、生活および食習慣など、母親へのアンケート調査から得られたさまざまなパラメーターと照合し、母乳中に含まれるTGF-β濃度に影響を与える身体的あるいは環境因子についての解析する(現在進行中)。
|