研究課題/領域番号 |
19390275
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
桑名 正隆 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50245479)
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研究分担者 |
瀬田 範行 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40338372)
佐藤 隆司 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90407114)
金子 祐子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60317112)
井上 有美子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60348638)
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キーワード | 強皮症 / 血管新生 / 血管内皮前駆細胞 / 脈管形成 / 単球 / 血管再生 |
研究概要 |
本研究では、申請者が提案した『血管内皮前駆細胞(EP)異常により強皮症の線維化・血管病変が一義的に説明できる』という新たな概念を検証した。末梢血中のEPの存在についてはコンセンサスが得られているが、そのフェノタイプにはいまだ議論がある。そこで、ヒトEPとして広く認識されている2つのサブセットそれぞれに着目し、強皮症病態との関連を追究した。 (1)循環血管内皮前駆細胞(CEP)-私たちは強皮症患者末梢血中のCEPの減少と成熟血管内皮への分化能障害を示したが、その後にそれを支持する報告と否定する報告が各国からなされた。そこで、既報で用いられた測定法間の相関と問題点について検討した。その結果、末梢血中のCEPは単核球10^6に1個程度と極端に少ないことからフローサイトメトリー解析前にソーティングが必要なこと、フローサイトメトリーで再現性のある定量のために蛍光ビーズを用いた解析が必要なことを明らかにした。多数例の再検討の結果、強皮症におけるCEPの減少と分化障害が確認された。 (2)単球系血管内皮前駆細胞(MEP)-強皮症末梢血における単球系血管内皮前駆細胞(MEP)を定量したところ、予想に反して関節リウマチや健常人比べて増加していた。さらに、強皮症由来MEPはin vitro、in vivoいずれにおいても血管内皮細胞による血管新生を促進する能力が高かったが、管腔構造への取りこみが悪く、それ自身が血管内皮へと分化する脈管形成能は高度に障害され、線維芽細胞や平滑筋細胞への分化傾向を示した。 以上の結果から、強皮症患者ではCEPの減少と分化障害があり、それを代償するためにMEPが動員される。しかし、病変部での強い阻害機転によりMEPは血管新生、脈管形成いずれの経路を介しても有効に血管修復・新生を促すことはできず、むしろ線維化細胞へと分化することで血管瘢痕化を促進する。本研究成果によりCEPとMEP両者の機能異常が強皮症特有の血管病変を誘導することが明らかとなり、それらを標的とすることが難治性血管障害に対する新たな治療の開発につながることが示された。
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