研究課題
小児末期腎不全の重要原因である「嚢胞性腎疾患の病態解明と新治療法開発」をその大目標とし、嚢胞性腎疾患の原因遺伝子が、実際には腎内のどの尿細管に分布し、どう機能するのか、解明された多くの原因遺伝子産物が、生理的状態で相互に関連をもつのか、嚢胞形成の最初の病的変化はなにか、腎嚢胞の発生や腫大を抑制する方法はあるのか、といった主に4点の命題について、分子生物学的・組織学的・生理学的手法を用いて詳細に検討を進め、嚢胞性腎疾患の病態解明と新たな治療法の確立を目指し、とりわけもっとも技術的に困難な微小単離尿細管灌流実験系により、ヘンレの太い上行脚および細い上行脚を研究対象として、マウス腎での腎髄質部NaCl輸送機能と嚢胞との関係に迫るための基礎データの作成に努力した。ヘンレの太い上行脚では、能動的NaCl再吸収により、管腔内陽性電位が出現するが、この電位の変化はNaCl輸送の変化に直結し、もしこの部位における電位の変化がすでに幼少期の嚢胞腎において出現してるならば、それは病因との関係を考察する上で重要な手掛かりとなる。そこで、嚢胞腎モデルマウスにおける検討を前提として、ワイルドマウスにおいて本部位での経上皮電位の検討が意味を持つかどうかについての基礎的研究を本年度の中心課題として位置づけ、実験を遂行した。電位の測定は十分に可能であることが、モデルマウスでもワイルドマウスでも可能であることがわかり、モデルマウスが本研究で利用できるかどうかについての重要な可能性の知見を得ることができたことは大きな進歩であった。次年度は最終研究年度であり、さらに本年度の成果を十二分に活用し、いよいよ嚢胞腎の病態において、幼少期の機能の変化がどの程度の病因との関連や病態進行への因果関係を持つのかについての知見を深めたい。
すべて 2009
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Pediatr Nephrol 24
ページ: 609-612
Stroke 40
ページ: 2859-2861