高IgE症候群は、慢性のアトピー性皮膚炎様の難治性湿疹、高IgE血症、細菌に対する易感染性を3主徴とする疾患である。免疫系以外の症状を合併する1型のものは、特徴的な顔貌と全身の骨、歯牙の異常を呈する。症状が免疫系に限局する2型のものは、重症の単純ヘルペスウイルスなどのウイルス感染症に反復罹患する。高IgE症候群の原因遺伝子は、一昨年まで世界的にも全く明らかにされていなかったが、2006年我々が2型高IgE症候群の原因遺伝子Tyk2を世界に先駆けて発見し、さらに昨年頻度が高く重要な1型高IgE症候群の原因遺伝子STAT3を同定した。STAT3の突然変異は、DNA結合領域に集積しており、コドン382のアミノ酸置換とコドン463の1アミノ酸の欠失がホットスポットだった。アミノ酸置換を有するSTAT3はサイトカインの刺激により正常にチロシンリン酸化されダイマーを形成したが、STAT3のターゲット配列に対する結合が正常の約4分の1に低下していた。突然変異を有するSTAT3はIL-6に応答してSTAT3-ルシフェラーゼレポーターが活性化されるヒト肝由来のHepG2細胞に発現させるとIL-6刺激によるルシフェラーゼ活性の誘導をほぼ完全に抑制し、IL-6のシグナル伝達に対してドミナントネガティブに働くことが証明された。以上の発見により高IgE症候群は、いくつかのサイトカインのシグナル伝達の異常が原因となって発症する症候群である可能性が示唆された。
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