研究概要 |
仮説:再生不良性性貧血(再不貧)においては、血液幹細胞を障害するeffecter細胞であるT細胞の活性化機序として免疫抑制機能を示す、骨髄間葉系幹細胞(MSC)の機能が減弱している可能性がある。再不貧の患者骨髄は造血細胞の減少と脂肪細胞の増加で特徴づけられる。再不貧患者の血液幹細胞においては、GATA-2の発現の低下がみられるがGATA-2はMSCからの脂肪細胞への分化を脂肪特異的転写因子を介して促進することから、MSCにおけるGATA-2の発現低下は、脂肪細胞の増加を惹起する可能性が考えられる。 対象と方法:27人の再不貧患者(未治療10人、治療不応例,7人、治療反応例,10例)と健常人(13人)から採取した骨髄液をMesen Cultをもちいて培養しMSCを得た。T細胞の抑制は健常人末梢血から単核球を分離し、PHAを添加した後サイミジンの取り込み能を測定し、この系にMSCを添加してT細胞の増殖抑制能を検討した。GATA-2および脂肪特異的転写因子であるPPAR-γの発現についてはMSCからRNAを抽出し、Realtime-PCR法で測定した。 結果:未治療再不貧、治療後再不貧、及び健常人由来のMSCは添加細胞数に比例して、T細胞の増殖能を抑制した。3群間で抑制能に差はみられなかった。GATA-2の発現レベルは健常人と比較して統計学的に有意に発現は低下していた。一方、PPAR-γの発現はGATA-2と逆相関していた。 考案:再不貧患者にみられる活性化T細胞が増加する機序として、MSCの免疫抑制能の減弱が関与している可能性は低い。今回の研究から、再不貧患者においては、なんらかの原因で造血幹細胞や骨髄MSCのGATA-2の発現が低下し、再不貧患者の骨髄像を特徴ずける造血細胞の減少と脂肪細胞の増加を惹起していると考えられた。
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