研究課題/領域番号 |
19390285
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
原 寿郎 九州大学, 医学研究院, 教授 (40150445)
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研究分担者 |
高田 英俊 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70294931)
井原 健二 九州大学, 大学病院, 講師 (80294932)
中津 可道 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00207820)
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キーワード | 遺伝子治療 / 原発性免疫不全症候群 / 伴性劣性無ガンマグロブリン血症 / アデノAAVハイブリッドベクター / NOD / SCID / γc完全欠失マウス / B細胞分化障害 |
研究概要 |
原発性免疫不全症候群に対して遺伝子治療が試みられたが、成功例はごくわずかであり、導入遺伝子による発がんが大きな問題となった。そこで従来の遺伝子導入による治療法に代わって、変異遺伝子を修復する次世代の治療法の開発を行った。伴性劣性無ガンマグロブリン血症(XLA)は、X染色体に存在するBruton Tyrosine Kinase(BTK)遺伝子の変異により、B細胞系の分化障害を来たす原発性免疫不全症候群である。これまで、マウスを用いた移植実験により、XLAでは正常造血幹細胞(HSC)を0.5%混入させることによりB細胞の分化障害を回復できる可能性が示されている。 アデノAAVハイブリッドベクター(HD-Ad. AAV.ベクター)は、HSCに感染性を示すAd5/35キメラベクターと、相同組換えによる目的遺伝子座領域での組込み(ターゲティング)による修復をおこすAAVベクターの両者の長所を備えている。我々はBTK遺伝子のクローニングを行い、GFPとHyg耐性遺伝子をマーカーとしたHD-Ad. AAV. BTKベクターを作製した。同ベクターをヒト男性B細胞株Nalm6にMOI4000で感染させ、GFP一過性発現細胞を2.8%認めた。HygによるSinglecell cloningを行い、Hyg耐性株61株(0.63%)を得て、7株(0.073%)で相同組換えを証明した。ウイルス遺伝子配列であるITRの組込みはなく、全ての相同組換え株でBTK蛋白発現を認めた。また、正常ヒト男性臍帯血よりCD34陽性細胞を分離し同ベクターを感染させた。正常ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞では10%程度のGFP発現細胞が得られ、ベクターゲノムの組込みを認めた。現在ターゲティング効率の解析を行っている。 また、理化学研究所の石川らと共同研究で、XLA患者HSCをNOD/SCID/γc完全欠失マウスに移植してモデルマウスを作製した。このモデルマウスはヒトXLA患者と同様にB細胞が欠失しており、無ガンマグロブリン血症を呈していた。HD-Ad. AAV. BTKベクターは、正常ヒト臍帯血CD34陽性細胞でのゲノムの組込みを認めており、今後は感染細胞をモデルマウスに移植してB細胞系の発現の解析を検討する。
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