研究課題
本年度の研究成果これまでの研究として、小児期発症疾患の炎症病態における自然免疫と炎症性サイトカインとの関わりについて検討し、川崎病や全身型若年性特発性関節炎、自己炎症症候群など各疾患における炎症性サイトカインの産生異常を明らかにしてきた。本年度は、小児期発症全身性エリテマトーデス(SLE)症例の腎生検組織を用いて、TLR9や糸球体スリット膜関連蛋白(nephrin、 podocin)、糸球体上皮細胞構造蛋白(synaptopodin)の免疫染色を行い、TLR9の腎組織内での局在を確認するとともに、SLEの主症状であるLupus腎炎において自然免疫受容体であるTLR9が担う病態への関与の解明を試みた。小児期発症Lupus腎炎患者の生検腎組織の免疫組織染色において、TLR9の発現は寛解期や正常腎では認められなかったが、疾患活動期において糸球体上皮細胞領域に一致した発現増強が観察された。また、TLR9が強発現する時期は血中抗二重鎖DNA抗体価の上昇と低補体血症とを認める時期に一致し、血中にDNA含有免疫複合体が多い時期である事が推測された。今回の研究で得られた知見はTLR9を始めとする自然免疫が自己免疫疾患である小児期発症Lupus腎炎の臨床経過に少なからず関与を示すことを実証し、今後の病態解明の一助となることを示唆するものであった。と同時に、TLRを含む自然免疫系をターゲットとした新たな治療法の確立に寄与するものと考えられる。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 図書 (1件)
Nephrol Dial Transplant On line