研究概要 |
遺伝性対側性色素異常症(DSH)は、手背、足背に粟粒大から米粒大の色素斑と白斑が混在し、顔には雀卵斑様の褐色斑が散在する常染色体優勢遺伝の疾患である。本症は二重鎖RNA特異的アデノシン脱アミノ酵素(ADAR1)遺伝子の変異により発症することを、2003年に我々は世界に先駆けて解明した。これまでに日本人患者において30種類の病因となる変異を報告したが、本研究においてさらに4家系においてそれぞれ4種の新規変異、c.3274delT,c.1493-1494delAG,c,3272T>C,c.2678T>Aを同定した。今までの検索で家系毎に変異は異なる事から、この疾患において変異遺伝子に創始者効果は認められない。本研究において行った電子顕微鏡観察で、色素斑部の色素細胞は腫大し、樹状突起は延長し、胞体内には小型で未熟なメラノソームが散在していた。一方周囲の表皮角化細胞には同様のメラノソームが孤立性ないしは集族して多数認められた。白斑部では色素細胞が減少し、胞体内の膜器官は崩壊し、メラニン色素はほとんど認めない。ところでADAR1遺伝子からは常時発現しているp11Oとインターフェロンにより誘導されるp150の2つの酵素型が作られるが、これは転写開始コドンが2箇所存在するために起こる。我々の報告した34種の変異箇所の検討から、p11Oが合成されるものの、p150は終止コドンの出現で合成されない変異が2つ見いだされた。つまり本症の発症にはp150の関与が考えられる。ヒトDSHと同様にADAR1遺伝子変異をヘテロに保持したノックアウトマウス(ADAR1+/-)を作成した。
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