医学分野でも広範な波長域の光、エネルギーの高い光線を治療に用いる機会が増え、その有用性の検証が進んでいるが、risk-benefitのバランスは未だ十分に解析されているとは言い難い。昨年度は、皮膚科領域で紫外線治療において頻用されつつあるナローバンドUVBとこれまで使用されてきたブロードバンドUVBの長期使用における皮膚発癌発生の比較において、ナローバンドUVB長期照射群がブロードバンド群と比較して有意に皮膚悪性腫瘍の発生率の上昇を認め、その機序として常用線量においナローバンドがブロードバンドに比し有意にCyclobutane pyrimidine dimmers(CPD)を形成することが原因であることが示唆されたので、今年度はヒトの光発癌に最も関連が深いと思われる太陽光の中に多く含まれるUVAのCPDの形成につき検討した。マウスに光増感剤の投与は行わず、364nmレーザーを用いてUVA領域の照射を行ったところ、酸化型DNA損傷のみでなく、CPDも生じることが明らかになつた。おそらく内因性の光増感物質の関与があると思われるが、この事実はヒトにおける皮膚癌発症を考える上で重要である。CPDを修復することのできないXPAマウスのうち黒色のものを選び、メラノーマの作用波長における第二のピークが存在する364nmのレーザー光を照射したが、アルビノXPAマウスと黒色XPAマウスとでCPDの形成に大きな差はみられなかったことより、少なくともユーメラニンの存在がCPDの形成に大きく関与することは少なそうである。今後は酸化型DNA損傷をつくりやすいとされているフェオメラニンの関与を検討したい。
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